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偏愛ドリップガール

気持ち悪くなる程度に愛してる

無題

 穴をあける。その行為は一瞬で、想像よりもあっさり終わった。


 別に痛くも無い。

 

 なんだ、この程度か……と鏡に映る自分の落胆を、嘲る。

 

――だからだめなんだよ。

 

 そんな簡単に人間は変わらない。小さな穴一つ、耳に穿ったところで、何も。

 

 自分は世界を易しく見過ぎている。囁きはやがて罵声となり、視界は水彩絵の具の様

に混ざっていく。

 

――だって。

 

 幼い頃からの口癖を紡ぐ。呟く度、散々に怒られたものだ。それでもこの言葉は私のせめてもの抵抗だった。

 

 この言葉が世界に無かったら、私は無駄とも言われる身じろぎ一つ、この世界で出来なかったんだ。

 

「大人になるにはどうしたらいいんだろう」

 

 着古して裾が擦り切れ、くすんだ白のワンピースはもう輝かない。日を反射しない。

 

 せめてここにあるのは、追想と小さな約束。それと少しの出血。